映画『あのこは貴族』の婚活女子

山内マリコ著『あのこは貴族』が映画化されて先日観てきました。女性監督(岨手由貴子)によっての映画化は、原作の意図が、キメこまかく映像化されていました。

主人公の一人は、榛原華子 (はいばらはなこ)さん。

東京は松濤のお屋敷街に生まれ育った27歳。結婚に焦り始めたお嬢さまです。

れのみみ
続くと思っていた日常に異変が… photo by れのみみ

「そうするものだから」の婚活の行方は…

焦る理由は「友だちがみんな結婚していくから」というもの。そんな気もちを、小説はこう描写しています。

結婚という幸せは、
自分からなんの行動を
起こさずとも、

年頃になれば
天からもたらされる
ような気がしていた。


どこかぼんやりとした眼差しで、言葉数も少ない華子さん。受け身でいても破綻がない、恵まれた環境に育った人の鷹揚さです。

いつか必ず
王子様が現れる
という漠然とした
確信のもと、

部屋の中でおとなしく
テレビでも見て
笑いながら、

その登場を
のん気に待って
過ごしていた。


私自身も、小説の彼女と同じく女子校育ちなので(貴族ではないですが(^^; このあたりの様子は、わかりすぎてイタいです。

「なぜ結婚できないの?」とうろたえ始めた華子さん。受け身だっただけに、対処法もうまく言葉にできません。ただ漠然と不安な日々。でもこれは単純に「その生き方、間違っていたよね」という話ではありません。

誰だって自分の過ごす日常は空気のようなもの。滞ってみて初めてそのカタチに気づかされます。

彼女は〈婚活〉を通して「自分はこういう世界にいたんだ」と自覚していきます。自分の価値観に気づくことで、自分の輪郭線をはっきりさせていく。

これは、婚活をした人が得る大きなメリットです。

PGビートル
さてあなたの住む星はどんな感じ?photo by PGビートル

別世界探検のようなお見合いを通じて

「結婚することだけ」をゴールに、やみくもにがんばる華子さん。知人の紹介で出会った男性の、グイグイくる大阪弁等々に(その程度で?)ビックリして、心が折れそうになったりします。

だって同じ世界の人なら、
言わずもがなで
通じ合っているものなのだ。

華子のような人に
紹介して然るべき男性とは、
どんな人なのか。


お見合いで「とんでもない相手に会った!」時のありがちなヘコみ方。しかし黙っていてそう都合よく物事は運びません (-_-;)

そして実はこれ、自分の価値観を知るうえでとても貴重な体験なのです。ヘコんだり、怒ったりしている場合ではなくて、その体験を次のご縁に活かせるか、婚活では大事なポイントです。

彼女はこう考えるようになります。

結婚相手の条件リストを
作ったことは
なかったけれど、

東京出身という項目は
言うまでもなく
第一位であることを、

この日はじめて
華子は痛感した。


これまでは
意識すらせず、
それが当然だと
思っていたのだ。


自分の生き方の輪郭線を描き始めた華子さん。

まずは「これだけは絶対イヤ」という意思表示からのスタートです。心が折れた!と婚活をすぐに止めてしまわないのも、実は彼女の内に秘めたる強さの表れ。

そうしてがんばった華子さんが、自分と同じ星(=世界)に住む住人と結婚して、めでたし、めでたし、かというと…

この婚活の試行錯誤の続き、次回に書いてみたいと思います。

※引用は、山内マリコ『あのこは貴族』集英社文庫 2019年 からです。



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